2019年11月3日(日)君住む街へ 愛知公演レポート

君住む街へ愛知公演の1曲目は「北極星」。スポットライトに照らされた歌詞太郎さんは我々にとって輝く星のよう。この光を求めて集った仲間と共にライブが始まっていきました。2曲目は「It's all right!」。口ずさむだけで「大丈夫」という前向きな気持ちになっていくのは、毎回ライブに参加する度に不思議に思う感覚です。次の曲は今回のツアーで発売されたOvertureの収録曲「つながって」。曲の途中から客席に風船が落ちて来ました。風船が歌詞太郎さんに当たり「おい!」とツッコミが入り、コミュニケーションを通して繋がりを感じたひとときでした。そして盛り上がりはそのままに「惑星ループ」が始まります。「あーあなたに逢いたいな」その歌詞の通り、客席からも歌詞太郎さんに会いたかった気持ちを爆発させながらライブを楽しみました。

MCでは「理想は理想に過ぎないのかもしれない。でも僕は理想を追い求めたい。」と言葉を紡ぎ、次の曲「その暖かな手を」が始まりました。この曲は手術後復帰作BLANK DISK の一曲。「会いたかったんだ」という歌詞から活動休止中の彼の想いを思うと、この曲を目の前で聴けることは奇跡のように感じられました。カメラ演出で歌詞太郎さんの表情が映り、ここに彼は今ここに立っていると我々の心に刻み付けてくれました。

続いてのMCにて「僕はライブ中は緊張しない。音楽が日常になっているから、2時間歌うなんてお手の物。でも去年7月の復帰ライブは足が震えた。」という言葉を聞き、彼に歌える日常が戻ってきて本当に良かったと心から思いました。「今日tonightを歌えて良かった。」という、思わず溢れて出たような歌詞太郎さんの言葉がとても印象的で、今日このライブに来られたことに感謝しました。

話題は愛知の話へ。「もともと味仙の台湾ラーメンは好きで、好きなものランキング6位くらいだったんですけど、あさり炒めの残り汁をラーメンに入れると最高に美味しくて現在ランキング1位になっています!」と笑顔で語る姿に、当たり前にあるものが幸せだと気づかされました。そこからたっぷりと愛知愛を語って頂いた後「中日ドラゴンズの本拠地〜!」とエネルギッシュに「真夏のダイヤモンド」が始まりました。

ライブの終盤曲と言えばmagic music。言葉が身体中を駆け巡り、大きな会場にもかかわらず、歌詞太郎さんに手を伸ばせば届きそうな距離に感じました。この曲は、歌詞太郎さんと客席のありがとうのキャッチボールが印象的で、自分はこの時間が本当に好きです。そしてラストを飾るのは「帰ろうよ、マイホームタウン」。この愛知も帰る場所の1つになれば良いなと願わずにはいられませんでした。彼が大切に思って下さったこの地を大切にしたいと心から思います。

アンコールの声に応え、歌詞太郎さんがグッズパーカーに身を包み再び登場しました。「パーカー着て来たけど、無理して買わなくて良いからね!ライブ来てくれるだけで感謝なんだから‥というか音楽を聴いてくれるだけで嬉しい。」グッズを買わなくて良いと堂々と言ってしまうその人柄に、我々はにっこりと笑ってしまう。それから某海外アーティストのこぼれ話が始まります。「ごめんね、あとこのエピソードだけ言わせて!」と楽しそうに話す姿に、歌詞太郎さんの身体はまさに音楽で作られているのだと改めて思ました。そうして始まったアンコール1曲目は「パラボラ〜ガリレオの夢〜」。アンコールで聴くパラボラは、今日のライブの繋がりを試されているかのように感じられました。その思いに応えるかのように会場のコールアンドレスポンスはバッチリで、会場全体のボルテージは最高潮に達します。公演最後の曲は「僕だけのロックスター」。今回のバンド紹介は個性的な演奏で、観客を湧かせて下さりました。ギターのyoshi柴田さんは知多出身で「愛を多く知る知多!」という紹介に、会場は大盛り上がり。バンドメンバーの絆を目の当たりにできました。「今日来てくれたあなたに拍手を!」我々も大切なメンバーだと心から伝えてくれる、このロックスターと一緒にたくさんの景色を見たいと心から思いました。曲が終わると「今まで知らなかった音楽の感覚をたくさん知ることができました!」と締めくくり、バンドメンバーとお辞儀をされました。その後、客席に感謝の言葉をかけ、客席からも負けじと「ありがとう!」と声を出します。我々は、再びこの瞬間に出逢えるように頑張ろうと思えるのです。

ここからはインタビューに移ります。楽屋に現れた歌詞太郎さんは、ライブの疲れなど無かったかのように「何でも答えるから!聞かれて困るようなことはしていないからね。」と元気な笑顔で場を和ませて下さった。まずはレポーターからライブの感想を伝えました。歌詞太郎さんのライブに初めて行ったとき全身に鳥肌が立った、また会いたいと思い今日を迎えた、と男性レポーターが熱く伝えると「うわーめちゃくちゃ嬉しいな!」と口元をおさえながら笑みをこぼされました。途中で涙ぐむレポーターには「僕の音楽を受け取ってもらえて嬉しい。」と声をかける姿が印象的でした。また、客席から『ありがとう』という言葉が出る空間が好きだと伝えると「音楽には価値は無いと思うんだ。自分がいくら良い曲を作れたと思ってもね。価値を付けるのは聴いている人だから、音楽は1対1の関係なんだ。だから、ありがとうを伝えなきゃいけないのは僕の方。それを伝えきれないからこそ、路上ライブで一人ひとりに会いに行きたくなるんだよね。」とにこやかに応えて下さった。

感想を伝え終わった後、質問をはじめていきました。
―セットリストを作る際のこだわりは何ですか
「作るにはセオリーがあって。それは、言いたいことは頭に持って来ること。最初は盛り上がりを大切にしつつも、飽きが来ないようにバラードも途中で入れる。あとは最近歌ってなかった曲を入れたり刺激やバランスも大切にしたりしているね。」「ちなみにアルバムを作る時も、セットリストを組むように曲順を考えてるよ。『推し曲は2番目ぐらいに入れると良い』って言われたことあるけど、全部推し曲だから難しいね。」と笑っていらっしゃった。

―曲を作るときのこだわりは何ですか
「心にあることしか書かないことだね。たとえば『明けない夜は無い』って言葉、確かにその通りなんだけど辛い思いをしている人に、僕は言えないなって思う。自分が言わない言葉は歌詞には入れられない。あと、音楽性=人間性だと思っているんだ。もちろん、全てのアーティストがそう言う訳では無い。でも、僕が悪いことしていたら嫌でしょ?だから僕は人間性も大切にしていくよ。」と真っ直ぐに答えて下さった。

ー君住む街へツアーを通して伝えたかったことは何ですか
「ライブハウス・ホール公演や路上ライブ。歌を届けるには幾つか方法があるよね。なんといっても路上ライブは無料で全国一人ひとりに対応できるが良いところ。昔『また東京でライブなんですね』とコメントを見たときハッとしたんだ。交通手段だけでチケット以上のお金がかかってしまうのはおかしくないか、って。だから路上ライブを続けて皆に会いに行きたいんだ。でも、音響には限界があるんだよね。一方でライブハウスはお金を頂いてしまうのがデメリットなんだけど、その分音響や照明に力を入れられる。」「それで質問の回答に戻るんだけど、去年はノドの手術から復帰の年だったから、とにかく皆に元気な姿を見せたくて。東京ではライブができたけど、キャパシティに限界があったから路上ライブをしたんだ。今年はより良い環境で全国に音楽を届けたいと思って『帰ろうよ、マイホームタウン』を軸として全国ツアーをすることにしたんだ。」「『まさか自分が住んでいる所には来てくれるなんて』『地元に良い所なんて無いと思っていたけれど、歌詞太郎さんのお陰で良さに気付けました』そんな声が聴けることが嬉しい。」と語る笑顔がとても眩しかったです。

―活動を続けてやりがいを感じた瞬間はどんな時ですか
「まさに今日の愛知公演!でもね昨日聞かれたら、昨日の大阪公演って答えていた。だから、常に今なんだ。練習やリハーサルも常に本番と一緒で全力だし、メンバーが変わればその都度練習もやり直す。最初は『練習はもっと力を抜いたらどうですか』って言われたこともあったけど、できなくて(笑)だって本気で歌うと上手くなるからさ。今のスタッフはそんな僕のことを見守ってくれるようになったよ。」と、笑って話す姿に信頼関係の強さを感じた。「今回のライブにあたって昔の音源を聴き直したんだけど、下手でびっくりしたんだ。これCD音源じゃなくてライブ音源じゃないかと疑ってしまったけど、CDだった(笑)でも、嬉しかったんだ。今が一番上手いってことが。だからこれからも本気で歌い続けるよ。」

―愛知公演の会場であるダイアモンドホールは歌詞太郎さんにとってどんな会場ですか
「ここはね!僕にとっては音響が素晴らしい。僕はイヤモニを使いたくない主義だからどうしても中音(ミュージシャン側が聴く音)が不安定で。でも、ここはPAさんのお力もあって気持ちよく歌える。人とのご縁にも恵まれた会場なんだ。」と答える姿に、歌詞太郎さんのライブには多くの方の力が込められているのだと、改めて知ることができました。

―歌詞太郎さんにとって、ファンはどんな存在ですか
「僕、ファンって言葉は使わないんですよ。『ファンって僕のもの〜』みたいな感じがするでしょ。」と自分に酔っているアーティストを演じながら話を続けて下さる。「ファンって一括りにしたくないから、音楽に共感してくれている『一人ひとりのあなた』だと思っている。だから、ファンクラブじゃなくてフアンクラブが良いんだけどね。不安を与えながら、良い意味で裏切っていきたい!」とその場に居たスタッフさんに、こういうライブやりたいんですよ〜と話し始める姿に、悪戯を考えるような無邪気さを感じました。歌詞太郎さんご本人がこんなにもワクワクしながら企画をしているのだから、我々はこれからも、いや今以上に楽しい経験を得られるのだろうと確信できました。いろんな景色を見に行きたい、彼とそしてあなたと一緒に。