今日も彼は大勢の人の目の前で特技を披露して見せた。飾りっ気のない笑顔の下で、彼は今、何を感じているのだろうか。今日も、ロックスターはステージの上で歌を歌っていた。その、天真爛漫な笑顔と歌に私たちは引き込まれるのである。メモリアルチケットに印字された、本公演は人生を変えるほどの感動を与えることを目的として行われておりますが変えられてしまった場合の責任は一切負いかねますのでご了承ください、という文章にくすっと笑って、「本望ですよ、ありがとう」と小さな声でお礼を言った。
 ところで、このメモリアルチケットは他にも遊び心にあふれている。
一、    アーティスト本人が本気を出していいと感じた場合は伊東歌詞太郎が払い戻しに応じます。
二、    本公演は家に帰るまでが公演です。安全に気をけて帰るようにしましょう。
三、    「君住む街へ」いうツアータイトルですが君の住んでいない街に行くことがあります。予めご了承ください。なお、君の住んでいない街に遠征してきていただいた場合も何ら問題なく、大歓迎させていただきます。
四、    チケットは通常、入場前に半を切り離すと無効になりますが、本券はその限りではございません。
五、    アーティスト本人の病気、その他やむを得ぬ事由により本公演が中止になる場合を除き、アーティストはあなたを全力で楽しませる義務を負います。ご協力のほどお願い申し上ます。
六、    本公演は人生を変えほどの感動を与えることを目的として行われておりますが変えられてしまった場合の責任は一切負いかねますのでご了承ください。
七、    本券の写真撮影、ツイッターSNS等へのアップロードは固くお願い申し上げます。

私が日本語をうまく使いこなせてないことが原因の可能性は高いが、会場で初めて読んだとき文章に若干の違和感を覚えていた。その違和感を拭うべく、メモリアルチケットにかかれていた文章を何度も読み返していると、つい歌詞太郎さんが語りかけてくれているように錯覚してしまった。
「ツアー君住む街へようこそ!伊東歌詞太郎です!今日は来てくれてありがとう。僕は今日もいつも通り全力で歌って今日のこの最新のライブを今までで一番最高のライブにするので、この街に住むあなたも、遠くから来てくれたあなたもぜひ、楽しんで帰ってください!いや、絶対に楽しませるから、楽しんでくれよ! あっ、そうそう、今日のこのメモリアルチケットはちゃんとツイッターとかに投稿して共有しといてくださいね?」
ここで、違和感の正体に気が付いた。普通なら、SNS等へのアップロードは固くお断り申し上げますと書くべきではないのか。そして、四角形で囲まれる明らかに浮いた7つの文字「なつと券げる他」。ナツトケンゲルタ………?

他券とつなげる!!

なるほど、それならすぐに!と、今回の大阪公演を含め、手元にあった色の異なる4枚のメモリアルチケットを一列に並べた。右下部分ではセーメーちゃんが歌詞太郎さんのおともをして各ライブ地で観光を楽しんでいる様子が描かれている。広島は牡蠣(目をハートにして万歳するセーメーちゃんが可愛らしい)、香川はうどん、大阪はたこ焼き。この流れできたら最後の一枚も絶対に食べ物だと思うのが妥当だろう。しかし、岡山県はジーンズ。
えっ、食べ物じゃないんや。それはずるい笑。このチケットは歌詞太郎さんがもつその県のイメージを現しているようだ。今回もまた、いい意味で期待を裏切られてしまった。

そして肝心の他券とつながりそうなものは、一番右端に書かれた文字。各チケットにつきそれぞれ異なる一文字が書かれていた。今わかったのは「一、処、終、る」。
ひらがなも漢字も混ざっているから、全部のチケットを並べたら何か文章になっているのだと確信した。歌詞太郎さんのことだから、私たちがびっくりするような発表を隠しているに違いない。しかし、ここで問題が発生。私はツイッターのアカウントを持っていないから呼びかけも、他のライブに参加した人の情報を得ることもできない。つまり、隠されたメッセージを確かめる術がないということである。ファイナルの東京公演まで指をくわえて待つしかないのかと、“ため息をつかない”という自分の中の約束事を危うく破ってしまうところだった。

いいなぁ、豊洲PITで、歌詞太郎さんはきっと楽しそうに生き生きとネタ晴らしをするんだろうなぁ。周りによく気が配れて、大人っぽいのに、子供っぽさも持っているのがまた魅力的だ。誰よりも大人でこどもなのである。

作家でもある歌詞太郎さんは、ツイッター、ツイキャス、ライブのMCといろいろな場で伏線を張っているから目を離せない。(油断していると何の前触れもなくCDが発売になったこともあったが) そうなるとやはり、ファンの皆さんとやり取りができるようにアカウントを作ったほうが賢いのだが、いつまでたっても電子機器と仲良くなれない私は今まで通り、「伊東歌詞太郎 ツイッター」とネット検索する日が続きそうである。

さて、そろそろライブレポートを書き始めるとしよう。
そう思い本文を書き始めた今日は11月10日。伊東歌詞太郎さんを突撃取材した大阪公演からもうすでに1週間が経っていた。細かいことを覚えているうちに書いたほうがいいということは、言われるまでもなく理解している。ただ、憧れの人を目の前にしてからすぐに平常心で文章をまとめるのは難しく、特に今回のように伝えたいことが沢山あるときはなおさらだ。私は普段、感じたことの約半分を“やばい”というたった一言に集約して表現している。嬉しい時も、楽しい時も、焦った時も、驚いた時も、うまくいかなかった時も、ただ一言“やばい”
これがまずかった。
このライブで感じたこと、歌詞太郎さんへの質問で気が付いたこと。これらをうまく伝えようと思うと、私のもつ言葉のキャパシティじゃ全然足りないということを悟り、ライブレポートを書くことに大きなプレッシャーを感じていた。しかし今はその思いが一転し、歌詞太郎さんとその歌声に感じたことを多くの人に伝えたいという思いに駆られ、くるくる寿司から慌てて帰ってきたところである。私は、日本一リピート率が高いライブは、おそらく歌詞太郎さんのライブであろうと推測している。そこでは、私の言葉で伝えられるより100倍感動的なライブが行われている。私に伝えられるのは、そのうちのたった1パーセントくらいだけれど、一度彼のライブに行ったことのある人たちはみんな、私の言いたいことを解ってくれるだろう。色々な境遇で考え方も違う。そういった意味では孤独な私たちが、それぞれの欲しかったものを手に入れられるのが伊東歌詞太郎さんのライブなのである。時には、自分の知らない世界まで知ることができる素敵な場所だ。もし今、袋小路からの抜け路を探して迷っている人がいるのなら、是非彼のライブに行ってほしいと心から願う。そこには沢山の魅力と暖かさが詰まっているから、どんな心の鍵穴にもはまる、変幻自在の魔法の鍵を見つけられるだろう。

11月2日土曜日、天気晴れ
寒い。いい天気なのにとにかく寒い。すぐそこに見えている太陽の光がこっちまで伸びてきてくれないかなぁなんて考えながら、ただじっとこの寒さに耐えていた。もう、ここについてから1時間ほどたっただろうか。大阪はきっと暖かいだろうというのは私の読み違えだったと悟ったとき、
「お母さん、ちょっとタピオカ買ってきていい?」
と、後ろから声が聞こえた。しばらくして、私より2~3歳下だろうか、ひざ上丈のスカートを履いた女の子がミルクティーのタピオカを持って帰ってきた。美味しそうにタピオカを飲むその手の中では氷がじゃらじゃらと音を立てている。今、この状況でコーンスープを欲している私はただの寒がりなのかもしれない。
それでも、この場所から動かないのには訳があった。今日、大阪のなんばHatchで行われる伊東歌詞太郎さん ツアー「君住む街へ 阪名東編~マイホームタウンへ~」のグッズを手に入れるためである。「しらゆり」のときの白パーカーはすごく人気で売り切れになったという情報を知っていたので先行販売の1時間半ほど前にやってきたのだ。今回のライブグッズはカーキとえんじ色を基調としたデザインで、秋らしくて可愛いものばかりである。みっ君さんの絵のタッチもすごく好きだから、確実に手に入れたかった。
とりあえず自分用に一式と、今日は仕事で来れなかったお父さん用のパーカー、お母さん・おねーちゃん用のパーカー・そして巾着バックをかった。
その後、ファンクラブ特典ブース前ではずれくじなしのくじ引きにチャレンジした。
なんと当たりは歌詞太郎さんのサイン入りライブグッズ!QRコードを読み取ってくじを引いたら、
「おめでとうございます!会員証風デザインカードが当たりました!」
というような画面が出てきて、ちゃっかりハズレた。しかし、全然悪い気はしないどころか、むしろ安心した。もしここで当たってしまったら、嬉しさを通り越して、多くのファンがいる中私だけいい思いをしているという後ろめたささえ感じていただろう。もう気が付いている人も多いだろうが、今こうしてライブレポートを書いているということは、私はオフィシャルライブレポーターに当選したのである。
サイン入りグッズ当たらんくてよかった~、とある意味肩の力が抜けた時、すぐ横でチリンチリンチリンッ とベルがの音が聞こえた。
「おめでとうございます!サイン入り、巾着バックが当たりましたよ!」
「えぇっ、どうしよう、すごい!本当に当たることがあるんですね!」
と、嬉しそうにグッズを受け取る女性を見ていたら、私までなんだか嬉しい気持ちになった。

 今回私は、2階席のチケットに当選し、一人でライブに来ていた。ライブハウスという最高の環境の中、一度でいいから全体のパフォーマンスが見てみたいと思っていたので、すごく楽しみにしていた。今回は仕事で来れなかったお父さんとお母さんには悪いけれど、“ちゃっかり楽しんでしまおう!”そう思う私と、ライブレポートに書く内容や、ライブ後にさせていただくインタビューに気を取られて“どうしよう…!”と感じている私が交差していた。
 17時00分ちょうど、ついに開演時間。大勢の前で何をするわけでもなく、ただ自分が感じるままにライブを楽しむだけの私が毎回ドキドキ(緊張?)してしまうこの瞬間。一瞬だけ、私たちと歌詞太郎さんの立場が入れ替わる。ライブで緊張することはないという歌詞太郎さんは今、心からこのライブを楽しみにしているんだろうなぁ。いつものように、出演者登場の音楽がかかり手拍子が始まる。そして、いつものようにバンドメンバーの方達が配置につかれて、いつものように歓声と拍手とともに歌詞太郎さんが……、という流れに見せかけて突然曲の前奏が始まった。この曲は、、北極星! よく、ライブの最初に歌ってくださる大好きな曲だ。とりあえず、ライブレポートを書くために持ってきたメモ帳に曲をメモする。そして、歌詞太郎さんが登場!今日は白色のオーバーシャツに、黒色のズボンと靴だ。
北極星に手を伸ばしてみた…♪
1曲目から、大好きな曲だ。歌詞太郎さんの作る曲は、リズム感や歌詞太郎さんの表現力だけでなく、何よりも歌詞が大好きだ。言葉の表現力が乏しい私でも分かるような分かりやすい言葉で書かれているから、悩んでいて頭がオーバーフローしそうな時でもすっと心の傍らまで入ってきてくれる。北極星はすごく前向きな気持ちになれる曲で、私自身何度も助けられてきた。そして、今まで周りの目ばかり気にして生きてきた私に、新しい居場所を与えてくれた。歌詞太郎さんの追い求める光は音楽の中に、いや、音楽そのものなら、私にとっての光は何だろうか。まだそれは雲に隠れているけど、最近少しずつぼんやりと明かりがさしてきているような気がする。歌詞太郎さんのライブに行ってたら、あと少しで、もう少しで私にとっての光が見つけられる気がしている。というよりは、こんな言い方をしたら幼い子供の夢のように聞こえるけれど、最近は歌詞太郎さんのような人になりたいという思いがすごく強くなってきている。私は歌が得意でないから、媒体は音楽ではないけれど、せめて私の身の回りの人ぐらいにはいい影響を与えられるようになりたい。どんな時でも自分を持って前向きに進み、人の痛みや辛さにも寄り添って理解しようとする優しさが強く、そして出会った人すべてを安心しきった笑顔にさせる力がある、そんな歌詞太郎さんはある意味、私にとっての北極星だ。
そして、歌詞を一部変えて、でようこそ!ここは大阪!と、マイクがいらないぐらい大きな声で叫んでいる北極星はとても輝いて見えた。

そして2曲目…、2曲目は何だっただろうか。あれだけライブレポーターの仕事を全うしようと思っていたのに、北極星の感動が大きすぎてセットリストのメモをするのを忘れてしまっていた。いや、言い訳するのはよくないな。ライブレポートを読んでくださっているみなさんごめんなさい。ここからは、私の記憶を頼りにライブレポートを書くので、ご了承いただきたい。

気を取り直して2曲目、It’s all light!
どうなったってありえないなんてことなんてありえない…♪
この曲は歌詞で韻を踏んでいたりして、リズムや手拍子、掛け合いがとっても楽しい曲だ。それに歌の途中で歌詞太郎さんが何度か客席に向けて指をさしながら歌ってくださる部分があり、会場全員参加型ですごく盛り上がる。この曲には「君」という言葉が何か所か出てくるが歌詞太郎さんは普通にしゃべるときはいつも“みんな”という言葉を使うけれど、自分がこころから伝えたい言葉があるときはよく「あなた」という言葉を使い、私たちを呼んでくれる。ファンの人はこんなに沢山いるのに、ファンという一括りのものではなく、一人一人を大切にしてくれているんだなぁと思うと、少し嬉しくなる。こういった細かいところにも歌詞太郎さんの人柄がでているから、歌詞太郎さんの言葉や歌はダイレクトに心に響くのだろう。
3曲目、つながって
ゆっくり落ちてゆくの この世界の遠くまで…♪
曲が始まると直ぐに4匹のぷよぷよ(バルーン)が会場に乱入してきた。私は2階席だったのでぷよぷよには触れなかったけど…!こんな演出は初めてだったのでとてもわくわくした。私が参加した前半のライブ(広島、香川、岡山)では歌詞太郎さん自身がぷよぷよの様な、まるで骨が無いみたいな動きをして歌っていたけど、今回はぷよぷよと遊んでいた。歌いながらぷよぷよを目で追って、舞台に上がってきたら客席にパスする。ぷよぷよを返すのに一生懸命になって、歌い始めが遅れたりするとことあったがまたそれも面白く、キックもきれいに決まっていた。これは、私の勝手な偏見なのかもしれないが、舞台の上のアーティストって良くも悪くも格好つけているというか、何処か別世界の人というかそういう独特な雰囲気がある。でも、歌詞太郎さんは舞台の上でも格好つけずありのままの自分でいるから、この時に限っては少し幼く見えた。でも、それが彼のライブの良さで、とても尊敬している人なのに、不思議とすごく近い存在に感じた。

4曲目、惑星ループ
トゥットゥル ルットゥ ルットゥ トゥル…♪
曲が始まって歓声が沸いた。今思えばぷよぷよたちはどのタイミングで退場したのだろうか。この曲では絶対的に、“このままパッと忘れられたら楽だろうなぁ”という部分が印象に残った。エアーで手をくるくる回したり、曲の最後の締めの手拍子もとてもきれいにそろった。もう4曲目で、一曲目から全開で歌っている歌詞太郎さんだけど、あと12~13曲だけでなく次の日も名古屋でワンマンなのに、ここまで声を張って歌えるということに毎回感心してしまう。彼は、最新のライブを最高のものにするためにいつだって全力だ。きっと、手を抜くことを知らないんじゃないかとさえ思えてくる。今日見ることができた最高のライブが明日にはもう更新されているのかと思うと、それは何だか残念な気もするが、全力で頑張る姿は本当に格好いいと思う。普段生活していると、一生懸命やることを悪くいう人もいて、それを気にしているとやりたいように前に進めない時がある。でも、彼の姿を見ていると、頑張ることは恥ずかしいことじゃなくて良いことなんだと自信を持って思えるので、しっかりと心に焼き付けておいた。

MC
今日は来てくれてありがとうございます。って一礼、のはずが、やまない拍手に頭が上がらず何度も何度もお辞儀をする歌詞太郎さん。やっと、前を向いてくれたと思ったら
「今日は来てくれて本当にありがとうね」ってもう一度。
毎度のことながら感極まっている彼は

「こういうMCって、終盤とかバラードの後とかのMCに持ってくるべきってわかっているけどそんなの知らない。僕は、今日、来てくれたあなたにありがとうを一番に伝えたいから。」

と言っていた。それがとてもとても印象的で、こんなにライブを何回もやって、大勢の人の前で歌っているはずなのに、自分の歌を聴きに来てくれる人がいるっていう事実に毎回感動していることが少し不思議に感じてしまう。私たちは、幸せに感じることがあっても繰り返すうちに、感じていたはずの幸せを感じなくなっていってしまう。でも、彼にはそんな気持ちがないということがすごく素敵に思えた。だからこそ、こんなにもファンの人たちを大切にしてくださるんだなぁと、心から尊敬する。そして、

「今日も全力でお届けするので楽しんで帰ってください! いや、楽しい気持ちで寝てください!」

と言って笑いを取ってから次の曲へ

5曲目、さよならだけが人生だ
さよならだけが人生だという…♪
あぁ、今回も歌詞太郎さんに負けてしまった。MCで笑いを取った直後のバラードは危険である。気持ちが一瞬でその世界に持って行かれるうえに終始さぶいぼが止まらない。その場の雰囲気を一瞬で変えることのできる彼の歌声にはどこまでも限界が見えない。
そして、一番を歌い終わるか歌い終わらないかぐらいで、ステージの裏から何かがゆーっくりと降りてきた。何やろうと思って目を取られていると、巨大なスクリーンに歌詞太郎さんの歌う姿がリアルタイムで映し出された。こんな演出があるなんて何も予想していなかったから、とても驚いた。今回は2階席で全体を見渡すためにステージとの距離が遠くなってしまったので、歌詞太郎さんが歌う表情をはっきり見ることは諦めていた。それにもかかわらず、スクリーンに映し出されて表情がよく見えるから(それも色々な角度から)とても嬉しかった。

6曲目、365
スクリーンに表情は映し出されたまま、しっとりと歌い上げる歌詞太郎さん。正直言って、私は“愛している”という言葉が苦手だった。私自身が他人からの愛情を受け取るのを苦手にしているから。でも、この曲を歌詞太郎さんが歌ったとき、“愛している”っていう言葉が不思議ととっても綺麗な言葉に聞こえていた。いつもは道端ですれ違う男性を全力で避けて歩いている私だが、ほんの一瞬だけ「愛」という得体のしれないものに憧れを持ってしまったのはここだけの秘密にしておこう。(愛は家族とか友達とかペットとか他にも注ぐとこ沢山あるしね!)そして、この曲は愛していると同じぐらい、私の大好きな“ありがとう”と言葉が入っている。 身近な存在になるほど、ありがとうと伝えるのは照れくさいけれど、ちゃんと言葉にして伝えられる私でいたいなぁと感じさせられた。

7曲目 小さなころから
空が高かったからなぁ 澄み切っていたんだ…♪
夕焼け感の漂う演出と、歌詞太郎さんが空を仰ぐように歌うのとが重なって、映画の1シーンを見ているようだった。この曲は本当に何回聞いても心に刺さる。私自身に欠落しているものをダイレクトに教えてくれた曲だから。私自身が家族の愛に気が付かず、勝手に孤独を感じていたんだと今なら理解できる。繰り返しの部分が“どうしたって僕たちは誰かを愛さずにいられない”と“どうしたって僕たちは誰かに愛されず生きられない”ってなっていて、その部分に多くのことを考えた。愛は双方向じゃないこともあるけれど、自分が愛するものをとても大切にすることで、誰か大切にしてくれる人がいるときは素直にありがとうって伝えられるのかな。歌詞太郎さんが毎回のライブで感極まったり、一番にお礼を言ったりするのはそういうことなのかなと、今やっと気が付いた。

8曲目 約束のスターリーナイト
願い事聞いてよ 消えない一番星…♪
歌詞太郎さんがこの一節を歌い終えた頃、わたしは既に切ないモードに入っていた。彼が歌を歌うと、織姫と彦星のような大恋愛、前世でもしたことがないだろうにその表現力が高すぎて自ずと歌詞にかかれた想いに同調してしまう。“願い事聞いてよ 一年で一度で構わないから”の部分で人差し指を高く頭の上にあげて歌う彼を見ていると、何とも表現できない気持ちになった。

MC
「みなさん、ちゃんと映ってましたか?自分では映像みないですからね。 いや~、びっくりしたでしょ?」
そんな一言から始まったMC。私たちには言わずもがな好評価のスクリーン映像だったけど、どうやら歌詞太郎さん的には不本意だったらしい笑。その後、

「僕は化粧なんてしたくないからですね?だってライブ終わって、コンビニに野菜ジュース階に行ったときに、“あっ、歌詞さんだ!って、あれ…。”ってなったら嫌じゃないですか!」
などと言って笑いを取っていた。あんなに大きなスクリーンに映し出されて歌うなんて、普段のライブでは緊張しない歌詞太郎さんも違う意味で緊張したのか、照れ隠しをしているのかな。

「あっ、でも万がいち、何かメディアに出演したときに化粧をしていたらそれは僕の意志じゃないですからね?周りがみんな化粧をしているから、逆にしていないほうが浮くときもあるんです。そういう事情もあるってことを理解しておいてくださいね?」

歌詞太郎さん、これはまた何かの伏線をはっているのかな…。そう解釈した私は嬉しいお知らせを期待して、もうすでにわくわくしている。

「みなさん、今年の目標のメジャーデビューはできそうにありません。どこでもいいならいつだってできる。でもそういうわけじゃないんだ!」

「全力で頑張ることはこれからもずっとかわりません!」

9曲目 アストロ
色あせた設計図 作りかけのシャトルを見せて…♪
迂闊にも、アップテンポの曲にもかかわらず、感動して目頭が熱くなった。あのMCからのアストロは私だけでなく、多くの人の心の琴線に触れただろう。歌詞太郎さんが今よりもずっと高いところにある何かを目指す限り、何処までも昇って行って少しだけ遠い存在になってしまうんだろうなぁ。そう考えると辛くなるところはあるがライブチケットが今よりもっと取りにくい状況になれば、いつだって私たちを大切にしてくれる歌詞太郎さんはきっとまた路上ライブを行ってくれるだろう。だが、ライブに参加できる回数が減ることは避けられなさそうである。私はこの場所でもっと多くの大切なものを早くたくさん見つけなければならない。

10曲目 ???
笑い方も忘れて 間違え方も忘れて…♪
10曲目は、私の知らない曲だったけれど、すごくスピードがあって頭に残るリズムの曲だった。いつ歌っていた曲なのだろう。曲名が調べて何度も聞きたい。
≪更新≫
ツアーファイナル前日にニコニコ動画とYoutube で配信された、buzzGさんのワールド・ランプシェードという曲でした。

11曲目、からくりピエロ
待ち合わせは 2時間前で…♪
この曲はツアー前半からの引継ぎで。ほんの数秒前とは違う雰囲気をまとった歌詞太郎さんは相変わらず感情的に歌っている。この曲は主にピアノの音で演奏されていて、特に“一秒だけ呼吸を止めて”の部分でその歌声だけを聞くことができる珍しいパートがあるのも好きだ。あとなんて言っても、“僕が壊れてしまうから”の後の本来なら間奏部分で、歌詞太郎さんのアレンジを聞くことができる。アレンジはライブでしか聞けないから何だかうれしい気持ちになるし、毎回違う歌い方なのがいい。歌詞太郎さんがその瞬間表現したかった今日のからくりピエロも私の記憶に強く残った。

12曲目

MC
「あの、アストロっていう曲あるじゃないですか? 語弊を恐れずに言いますよ。僕ね、めっちゃアストロ歌うの下手なんです笑。 今回、このスクリーンの映像を作ってもらうために音源をおくって、最後映像を確認するときに音源も合わせて聞いたんですよ。そしたらもう自分でもびっくりする位下手くそで。笑」

「音源は、僕が昔に投稿してたものなんですけど、その時歌える最高の歌を音源にしたはずなんだ。でも、その時の歌を下手くそって思えたってことは僕自身が成長してるって事だから一人で嬉しくなっちゃって!」

そう言って笑う歌詞太郎さん。いつだって気遣いができて謙虚なのに、歌が歌えるという一番の特技だけは認めてしまうというところが清々しくてまた憧れる。
でも、今の自分にはまだ満足していないようで、

「練習するだけ上手くなるはずだから、これから先も日々最高を更新していきたい」
と、力強く言っておられた。

12曲目 真夏のダイヤモンド
誰だってヒーローを狙う 実際黙ってたって…♪
MCの流れからこの曲を期待していた、この曲が始まってとてもドキドキした。今回発売されたCDの新曲、真夏のダイアモンド! 会場のボルテージも一気に上がる。
ツアー「君住む街へ」の前半からこの掛け合いの多い曲を何の前触れもなく披露するなんて、音楽は絶対にみんなに伝わると心から信じておられる歌詞太郎さんにしかできない芸当だ。、「自分が感じたことや伝えたいことしか曲にしない」とよく言っておられる。つまり、彼の信念そのものであるこの曲を私は次のように解釈した。
“スタートがどんな状況の人でも、やりたいことがあるならばただ邁進すればいい。できてないことを取り繕い、目を背けるのではなく、誰かが見ていなくても毎日コツコツと努力すればいい。失敗しても、うまくいかない状況が続いていても努力をやめない限り目標に近づけるんだ。”
歌詞太郎さんの作る曲は、信じていれば夢は叶うみたいな綺麗事じゃなくって、うまくいくのは努力に起因しているという考え方がすごく魅力的に感じる。そして、上辺だけ取り繕っているのではなく、彼自体が努力家だからその歌は私たちの心を震わせる。スクリーンの映像と一緒に1234とカウントダウンし、全戦全勝と手を振り上げた。すごく楽しそうに歌う歌詞太郎さんは大きくガッツポーズ! 歌詞には“頑張れ”という言葉は全く出てこないのに、気が付けば頑張ってみたいという気持ちを後押しされていた。

13曲目 革命トライアングル 
明けていく革命前夜に もう一度思い出した…♪
ツアー前半ではこの曲を聞けなかったので、今回歌ってくれたことがとても嬉しかった。
歌と照明と後ろのスクリーン映像がマッチしてとてもかっこいい。CDとは曲の始まり部分が全然違うくて、それもまた良かった。さわやかな部分も切迫した部分も、歌詞太郎さんは音楽を自由自在に操ってしまう。曲の終盤、自分の映像が映っているときはスクリーンに見向きもしなかった歌詞太郎さんが、ちらっと後ろを確認した気がした。

14曲目 ムーンウォーカー
「さぁこれから 犯罪者にならないかい?」…♪
リズム感が癖になるこの曲は、ライブでの「あの夜空を好きなだけ僕たちで奪おうぜ?」という部分の歌い方が本当に好きだ。そして、昨日と今日狭間の自分 一瞬だけすれ違うといったとき、歌っている歌詞太郎さんがふっと後ろを振り返り、本当にすれ違ったかのように見えた。歌詞太郎さんは今日のライブで何か新しいものが見えたのだろうか。私にとって今日は一生忘れられないGOOD DAYになった。

15曲目、I Can Stop Fall in Love
思い出せば 夏の日差しが強すぎた日で…♪
曲が始まると直ぐにみんな片手にタオルを用意する。そして、ぐるぐるぐるぐる回す。この一体感が本当に楽しい。もうライブ終盤だけど、ずっとここにいたいと感じてしまう。そして、ポップな文字がスクリーンに映し出されさらにヒートアップした。

16曲目、magic music
夜の帳が下りる頃に 僕らいつでも出会うだろう…♪
この曲と、帰ろうよマイホームタウンの時、歌詞太郎さんはゆっくりと客席を見渡しながら歌う。今回は2階席だったので直接こちらを向いてくれることはなかったが、私たち一人一人に話しかけてくれているような感じがして、その大きな優しさで会場がつつまれていくのが分かった。私たちにこんなに多くのことを教えてくれるのに、ありのままのあなたを見せてくれてありがとうって言えるなんてすごく素敵だ。上手くいかないとき、頑張れって言われたくないときもあるけれど、大丈夫だよと傍にいてくれる歌詞太郎さんの歌は今日も私に魔法をかけてくれた。

17曲目 帰ろうよ、マイホームタウン
思えば遠くに来たもんだ 見慣れない景色に…♪
最後をしめるのは「君住む街へ」の最後にふさわしいこの曲。どこまでも暖かく、ずっとあこがれ続けたものが詰まったこの曲に涙がこぼれそうになった。大学に行くのに一人暮らしをし、故郷に帰るのも年2回程度の私が家族に会うのは歌詞太郎さんのライブの日。私と家族を繋いでくれたのも、今私が自分がやりたいことを頑張れているのも歌詞太郎さんがそのきっかけになってくれた。
前から順番にずーっと後ろまで見渡しながら、優しく微笑んで歌ってくれてずっとここにいたいと思った。私にとってどんな時より暖かい気持ちに包まれる、歌詞太郎さんのライブは私にとってのもう一つのホームタウンだと心から思った。
最後の誰よりも優しい「一緒に歌おう」を合図に、みんなでラララ…♪と歌った。そして、マイクをおろして、とても幸せそうな顔でありがとうとポツリ。

そして、曲が終わると、
「ありがとうございました!今日は来てくれてありがとう。伊東歌詞太郎でした!」と言ってスッと舞台裏に帰って行ってしまった。


アンコール
(この辺りから、急に突撃インタビューすることを思い出して記憶が半分飛んでしまっているのだが、覚えている限りのことを絞り出して書きます。)

ライブグッズのカーキのパーカに着替えて再び歌詞太郎さん登場。
「アンコールありがとうございます! みなさん、グッズ見ましたか?今回もとってもいいものができちゃって。東名阪でのグッズ何作るかっての話になったとき、パーカーいいねって。ついに僕も自らパーカーを欲するようになってました笑」

「この前、来日した大物 (すいません、どなたか名前忘れてしまいました)が、“みんな、ついに俺様が日本に来てやったぞ。そうだ、俺は最近家を買ったんだ。そんな俺のためにライブグッズを買ってもいいんだぜ?”というようなことを書いていて、ほんと外国のアーティストってすごいなーっと思って。僕は、バンド時代本当にお金がない時があってお金って大切だと思うからそんなこと言えないですから。みなさん、くれぐれも無理しないでくださいね?」

本当にどこまでも、思いやりのある人である。だが、私はいつもライブグッズ買いたくて仕方なくて喜んで買っているから、これは珍しく歌詞太郎さんが間違ってるなー笑、と思った。(自分の分以外にも家族の分の服と、とりあえず友達に聞いてほしいから毎回余分にCD買って私自身も満足するので笑)歌詞太郎さん、もっと売り込んでも大丈夫ですよ!と心の中で訴えた。

そうこうしていると、バンドメンバーの方たちも帰ってきて、恒例の記念撮影をした。
その日の夜にツイッターに投稿してくれる。寝る前に、“伊東歌詞太郎 ツイッター”と検索をかけて、幸せな気持ちで眠ることができる。

アンコール① パラボラ~ガリレオの夢~
まだ君の不安が消えないで 目を伏せたまま歩き出すなら…♪
今日はパラボラ無かったなぁと少し残念に思っていたら、まさかアンコールに聞けるとは!観客のwow wow wow の歌もぴったりで、この曲が大好きだけど、今日は仕事で来れなかったお父さんにも、客席と歌詞太郎さんとのハーモニーを聴かせてあげたかった。

アンコール② 僕だけのロックスター
子供の頃憧れてた テレビの中のシンガー…♪
やっぱり、歌詞太郎さんといえばこの曲。今日も最後まで全力で歌ってくれた。こんなに一音一音を大切に大きく口をあけて歌ってくれる人、他にはいないよな。ステージの上のロックスターはとても眩く輝いてみえた。

バンドメンバー紹介のでは、
「最後にボーカルは伊東歌詞太郎と、今日ここに来てくれて、一緒にうたって、一緒に楽しんでくれたあなたでした!」
と、私も仲間に入れてくれるのが嬉しい。

歌詞太郎さん、ほんまおおきに!
彼の熱意とBGMの柔らかなパラボラの音が私たちを優しく抱き込んだ。


あっという間の二時間だった。つまらない映画を見たときはとても長く感じるのに、まだ夢を見ているような気分だ。どうしよう。もうすぐ、歌詞太郎さんへの突撃インタビューが始まってしまう。面接のとき、尊敬する人は?と聞かれたときには迷わず伊東歌詞太郎さんです。と答えてずっと憧れてきた人に直接質問できるなんてこと本当にあっていいのだろうか。宝くじが当たるよりもずっとずっと嬉しい。
受付の方と私を含めたライブレポーター3人で打ち合わせをしているときから心臓が脈打っているのが分かった。話の内容が全く頭に入らず、
「すいません。さっき何とおっしゃいましたか」
なんて、敬語にもなっていないとんちんかんな発言をしてしまうこともあった。今まで生きてきて緊張することなんて数えるぐらいしかなかったのに。今日の私は何かがおかしい。みんな、緊張しているはずなのに、“落ち着いて”って優しく声をかけてくださった。

どうやら歌詞太郎さんは、終演後のあいさつをして回っているようで、先にインタビューをする部屋に入り待つことになった。壁一枚向こうから聞こえる歌詞太郎さんの声に、1度は落ち着けようと頑張った心臓が、私の意志に反して再び走り出してしまう。

「今日はありがとうございました!」

「わぁー! 嬉しい! ありがとうございます」

気持ちを、誰にでも伝わりやすい簡単な言葉でストレートに伝えられる歌詞太郎さんは、本当に素敵だなと改めて思った。気持ちは文字では伝えられたとしても面と向かって伝えるのは本当に難しいから、私は本当に伝えたい言葉ほど遠回しな伝え方になってしまうことが殆どだ。(伝わってるよな?あとは察して!といった風に)
そうか…。嬉しい時は嬉しい、相手に感謝を伝えたいときはありがとう、悪いことをしたときはごめんなさい。これでいいじゃないか。飾らない、単純な言葉に思いを込めたほうが確実に相手に伝わる。“よし!今日は真っ直ぐ歌詞太郎さんの目を見て、ありがとうを伝えよう!”そう心に決めた。

 しばらくして、扉が開いて歌詞太郎さんが入ってきた。
「あっ、今日はよろしくお願いしまーす! えっと、どんな感じでやりますか?」
その後少しの間相談されて、結局ソファに座って、歌詞太郎さんと私たち三人の間に机を挟んだ配置で行うことになった。

私たちレポーター3人のうち1人は男性だったのだが、
「あー、嬉しい!男性の方がいるじゃないですか!男性は、音楽で選んでくれる。だから、男性ファンのいるアーティストは格好いいと思ってるんです。でもねー、最近増えてきちゃったんですよー、男性ファン!笑」
と、すごく楽しそうに話す歌詞太郎さん。そして、私たちの方を向いて
「いや!女性ファンも大切ですよ?笑」
と付け足す。言い直さなくても、の暖かさをいつも貰っているからわかってますよと、緊張しているはずなのに少し笑ってしまった。

私たちレポーター3人は順番に2問ずつ質問をさせていただいたのだが、その中で私は
「歌詞太郎さんはどうしてそんなに頑張れるんですか?」という質問と、「毎回のライブで最高を更新されている歌詞太郎さんですが、3年後はどんなライブをしていると思いますか?」という質問をした。
「今日のライブも本当にありがとうございます。えっとなに質問しようかな」
頭の中で何度も練習したのに、目も見ずに早口で言ってしまった。今、歌詞太郎さんが目の前にいる。憧れの人に出会うことができないまま一生を迎える人が殆どなわけで、こんな機会めったにないことなのに、私は何をやっているんだと、正直自分にがっかりした。
それに、質問メモして行ったのにその紙を見ながら、なに質問しようかなんて、すごく失礼なことをしてしまった。どうしよう。もう、頭が真っ白で何をしでかすかわからない自分が怖くなってきた。するとそれを見かねたのか、係の方が
「彼女は今すごく緊張しているんです」
と、フォローを入れてくださった。すると歌詞太郎さんは
「だいじょうぶ大丈夫。非日常なことでは僕も緊張しますから笑、僕にとってはライブは日常的なことだから緊張しないけど、この前、○○さん(お名前聞き取れなかった泣)とお話ししたときは僕も緊張しました。それに、僕にとってもライブよりこのインタビューの方が非日常的ですしね。質問、なんでも答えますよ。」
と言ってくださった。インタビューに来て慰められている自分が情けなくなるが、せめて自分に与えてもらった任務はしっかり果たそう。小さく息を吸って質問をした。

「努力家でオールマイティーなイメージの強い歌詞太郎さんですが、どうしてそんなに頑張れるんですか?」

「僕は日常ではすごくダメ人間ですよ笑」

と言って、オールマイティーっていう言葉をさらっと訂正してからこう続けられた。

「僕ねー、音楽に関して、努力した覚えないんですよ。それこそ、僕の人生は殆ど音楽だったから、これまでそんな努力したことなんてないです!あっ、でもそれはちょっと違うかな。ギターは努力してます。練習のきつさとか辛さとかありますし。歌を一日歌えって言われたら喜んで歌いますけど、ギター1日練習ってなると、うーんってなりますね笑」

「僕にとって、曲を作ったり歌ったりすることは本当に楽しいんです。1日10時間でもなんなくやれます。でも、疲れたなって日は、カラオケ行って歌いますね。10時間とか。自分の歌いたい曲を楽に歌って息抜きをしてます」

本当にどこまでも音楽を愛する人だなぁ。そして、ずっとしたかったこの質問の答えを聞いたとき、私は決定的なことを悟った。小さいころから、周りに頑張り屋さんだねと評価を受けて育ってきた私が、なぜ努力家な歌詞太郎さんをこんなにも尊敬したのか。それは、私が“○○しないように”努力しているのに対して、歌詞太郎さんは“○○したい”という思いで頑張って、努力することでさえ楽しんでいるからである。そうか、私は何に縛られることなく理想を求めるその姿に憧れたんだな。そう気が付いた。なら歌詞太郎さんはどんな未来を見据えているのだろう。

「毎回のライブで最高を更新されている歌詞太郎さんですが、3年後はどんなライブをしていると思いますか?」

「よくぞ聞いてくれました!」

と、歌詞太郎さん。

「本当にどうなっちゃうんだろうね。もう死んじゃうんじゃないかな笑 今年、大阪の立命館で行われたライブから僕の中でだんだんと調子が上がっていて。本当にいいライブが
できた時は記憶が飛ぶんですよ。いつか脳の血管とか切れちゃうんじゃないかと」

「僕が、ムーンウォーカーって曲を書くときにモデルになった山があるんですけど、調子がいい時は、歌いながらその時の色とか匂いをぱっとを思い出すんです。それこそ麻薬のようなもので。照明とかの良さとかも関係してるんですが、一曲目からその情景が見えてきたときにはもういよいよなんじゃないかと。いや、麻薬使ったことないですよ笑」

ライブ中の興奮は、私たちも歌詞太郎さんも同じだったと知って、たくさん聞きたいことがある中、この質問をしてよかったなと思った。歌詞太郎さんの歌がこんなにも心にすっと入ってくるのは、歌詞太郎さんがその時に見えているものをそのまま歌っているからなんだなぁ。そして、歌詞太郎さんは、ライブ中の気持ちを“無我”という言葉で表していた。

「ライブは楽しいのに、もし、さよならだけが人生だを僕が悲しい気持ちになって歌ったらそれは嘘だろ?僕は、悲しい気持ちをつくって歌うのではなく、その時感じたように、歌いたいように歌っています。」

何処までも自分らしく偽りがない。これが、歌詞太郎さんのライブの魅力なのだ。
突撃レポートが終わり、部屋を出るとき、“ありがとう、ごめんなさい、がんばってください”などたくさんの思いを込めて深々とお礼をしてから部屋を出た。変な奴と思われなかっただろうかと心配になるくらい不自然なお辞儀になってしまったが、もし、路上ライブなどで会う機会があるのなら、今度こそしっかりとありがとうが言える自分に成長していたい。

誰にでもある迷いや夢を題材にした曲を多く作曲し歌い続けておられる歌詞太郎さん。
彼に、本当の優しさとは、他人に気に入ってもらうようなことをしてあげるのではなく、相手のすべてを理解できなかったとしても、心から理解したいと思うことであると教えてもらった。一般的な常識が、全て正解じゃないということもそうだ。私は、初めて学校(大学の補講)を休んで歌詞太郎さんのライブに行った日から、あんなに嫌いだった世界が素敵に思えるようになってきた。もし、一人で悩んでいる人がいるなら、怖がらずに歌詞太郎さんのライブに来てみてほしい。その偽りのない歌や笑顔はどんなあなたでも受け止めてくれるだろう。